ご覧いただき、ありがとうございます。
ナースヒーロー 西 英雄です。
今回は、看護師6年目にして
初めて経験した感覚。
「30分間ただ立っていました」
というテーマを記事にしてみます。
看護師として6年目にもなると、
そうそう何もできないことはなくなります。
当然、指示簿も当たり前に使えますし、
指示がなくてもそれなりの判断ができます。
医師に相談したり、
患者さんの話を聞くことで
なんとかその場をしのぐことも
できるようになっています。
しかし、ごく最近の事なのです。
本当にそれしかできませんでした。
もちろん、頭ではいろいろ
考えていましたけど。
そんな絶望的状況でしたが・・・
結果的には少しだけ
ほっこりした気持ちになり、
“看護師っていいなぁ”と
改めて感じたことを、
伝えていきます。
患者は30代前半の男性、
胸膜炎疑いで入院しました。
とにかく「痛い!!」
胸が痛い。
右の脇腹から胸部、
背部にかけて痛い。
私たち看護師は、
痛がっている患者を
見慣れすぎています。
気持ちは分かるけど、
できることには限界がある。
これ以上はどうしようもない。
我慢してもらうしかない。
決して悪意はありませんが、
どうしてもそういう対応に
ならざるを得ません。
というか、MAXがそれ。
看護師あるあるですが、
若いメンズは痛みに弱い。
ナースヒーローとしては
なんとか払拭したい通説です笑
おじいちゃんおばあちゃんの方が
閾値が高いとか、痛みに鈍感とか。
憶測はありますが、
この患者さんはとにかく、
「今すぐどうにかしてくれ」
「麻酔をかけてくれ」
それだけならまぁよくある話で
ふ~んって感じなのですが、
病棟に来る前にちょいとERで
トラブってきております汗。
ざっくり言うとERのスタッフは、
痛みで苦しんでいる人への配慮が
無さ過ぎたということです。
ゆっくり体を動かしてもらえなかたり、
検査を早く終えることだけを考えていたと。
信実はどうあれ、
患者さんにそのような点で
不快感、不信感を抱かれてしまった。
その事実がマズかったと、
私個人的には思います。
患者さんも触発され怒りが増大し、
ついには暴力的な発言も
聞かれるようになりました。
そんな深夜帯の緊急入院、
からの日勤担当が私・・・
ナースヒーローといえど
トラブルは避けたいので、
やはりファーストコンタクトが肝心と。
すごく慎重にいくわけです。
半分ビビッていくわけです。
まぁ、お話しはしっかり
していただける方だったので
良かったのですが、
それでもやはり痛みが
定期的にで来るんですよね。
痛みが来たときは
本当に冷汗ダラダラで、
苦悶様の表情を浮かべて
見るに堪えません。
当然、鎮痛剤は使用しています。
点滴でNSAIDSとアセトアミノフェン。
ペンタジンなんかも試してみましたが、
どれも劇的な効果は得られません。
いや、もう本当に
麻酔使ってあげて!!
なんて心のなかで思うくらいで。
NSAIDSなら8時間ごとの
1日3回。
アセトアミノフェンも6時間
空けないと使用できない指示でした。
ペンタジンは効果が乏しかったので、
薬物依存の点からも
頻回使用を避けて中止となりました。
・・・で
私の手持ちカードは、
NSAIDS1回と
アセトアミノフェン1回。
痛みが強くなってきたら、
患者からナースコールがあります。
「この痛みを今すぐなんとかしてくれ・・・」
痛みがピーク時の患者は
本当に圧力がすごくて
威圧的で確かに恐いんですよね。
シンプルに恐い。
ERでのトラブル再来!?
なんて事も頭をよぎります。
とてもこちらの話しなんて
聞いてもらえる状況ではないし、
理攻めなんて何の
役にも立たないことは
すぐに分かりました。
そこから私の戦いは始まるのですが、
とにかく出来ることを考えます。
というか、指示された鎮痛剤を
投与するしかできないんですけど。
いくら点滴を投与しても
そんなにすぐは効きません。
しばらくすると痛みは
治まってくるのですが、
それが点滴のおかげかといえば
疑問を持つところも多々あります。
結局は痛みが治まるのを
やり過ごすしかないという現状。
患者がピークに痛がっている時に、
何もしないのも患者の精神衛生上
良くないと思っていました。
鎮痛剤の使用は、
患者の痛みが
どうしようもない時に。
その時の切り札として、
ギリギリまでとって
おかなければなりません。
でも無理ですよね。
分かっていました。
痛みのピークはほぼ
2時間毎にきます。
あっというまに
鎮痛剤は使い切りました。
それでも痛みは押し寄せます。
「どうにかしてくれ」
と懇願されます。
“先生に他の薬が使えるか
相談してみます“
とっくの昔に相談し尽くしました。
”なるべく痛くない
姿勢をとりましょう”
そんな言葉は、
この方には傷口に塩です。
本当に、
何もできることがありません。
してあげられることがありません。
・・・で、
どうしたか。
これ以上何もしてあげられない事。
追加で使える鎮痛剤はもうない事。
無力な自分を謝罪し続けました。
大抵こうなると、
その場から立ち去る選択肢も
考えられます。
しかし、私は立ちその場に
立ち続けていました。
看護師としての私が
そうさせたのです。
何もできることが無いからといって
立ち去るのは違うんじゃないか?
もしかしたら痛すぎて
意識を失うかもしれないし。
ここで立ち去ったら逃げた気がする。
患者さんにもそう思われて、
信頼関係を築けない。
そう思ったのです。
だから30分間立ち続けていました。
患者さんに触れるわけでもなく、
声かけをする訳でもなく。
ひたすら立ち続け、
時には謝り・・・
そんなこんなで痛みが治まると
私もナースステーションに帰還できたのです。
そしてその翌日・・・
その時の状況を患者さんが
話す機会があったのですが、
「この人は立ってるだけで
何もしてくれねーんだよ」
「何もできないことも
分かってるんだけどさ、
本当に立ってるだけ」
おいおいと・・・
色々考えてたぞと・・・
この言葉で本当に
私は救われました。
本当に心から、
ホッとしました。
自分の看護が正しかったとか、
自分はスゴイとか。
決してそんなことを
お伝えしたいのではなく、
私は実に無力だったな
と感じた訳です。
薬が無ければ、
患者の痛みを取ることができない。
物品が無ければ点滴をすることも、
酸素を投与することもできません。
マジで看護師は無力!!
今回、本当に身をもって
経験しました。
しかし、収穫もありました。
本当に患者さんに
救われた気持ちです。
患者さんが私の行動を
最大の評価で受け取ってくれました。
狙ってやったことではありませんが、
でも実際に起こったこと。
本当に何もしてないのです。
薬も道具も使ってない。
でも患者さんの心を満たすことができた。
そこに看護の、
無限の可能性を感じたのです。
自分はどんな看護をしたいか。
どんな看護師を目指すのか。
看護とは患者の療養上の世話と、
医師の診療の補助なのか。
それとも単純に、
人間関係そのものなのか。
看護とは究極の他者理解。
ではないだろうか。
そんな考え方ができた、
素晴らしい経験でした。
長々と書いてきましたが、
最後まで読んでいただき
ありがとうございます。
是非、感想などお待ちしています。
必ず拝読し返信させていただきます。
これからも多くの看護を
発信していきます。